お葬式


「お葬式」とは

浄土真宗で現在行なわれている葬儀のお勤めは、第八代蓮如上人の葬儀次第に準拠し、伝承されてきたもので、他宗のように「引導」を渡すことではありません。あくまでも、道俗ともにお念仏をもうすなかで、故人を偲び、これを縁として仏恩報謝の思いと哀悼の意を表す儀式です。
実際のお葬式に直面したとき、どうやっていいのかが解らず、さまざまに戸惑われる方が多いようです。また、お葬式の進行のなかに間違った習俗も多く見られます。ここでは、臨終から満中陰(四十九日)にいたるまでの、手順や注意しなくてはならないこと、また心得などを簡単にまとめてみました。



1 臨 終

@ 喪主、または代理人は、お寺へ参り、ご本尊さまに臨終の報告をし、寺務所に臨終勤行(枕経)の依頼をします。ただし、遠方、夜間等の場合には、とりあえず電話で連絡をし、相談をしてください。
A お内仏(お仏壇)の扉を開け、打敷を白に変え、お灯明をあげます。
B ご遺体は、できるだけお内仏のある部屋に安置します。部屋の都合で無理な場合は、他の部屋でもかまいません。その場合は、正面にご本尊さま(絵像または名号)をおかけして荘厳をしてください。
お釈迦さまが涅槃に入られたときは頭北面西(ずほくめんさい)のお姿だったそうです。そのお姿にならって、ご遺体はなるべく北枕にし、白服をかけ、顔を白布で覆います。なお、紋付き等の羽織を掛ける場合は、上下反対に掛けたりはいたしません。
C ご遺体の前に卓(机)を置き、香炉にお香をたきます。線香は立てずに、折って横にします。
卓(机)の上には、お花・燭台・香炉を置きます。一膳飯、団子、お茶、水などは、供えません。これらは「施餓鬼」(せがき)といって、餓鬼に施すものです。仏さまとなられた故人を、餓鬼あつかいにしてはなりません。
D 通夜・葬儀の日時、場所、その他儀式について、寺務所や葬儀社と打ち合わせをします。



2 臨終勤行

@ 臨終勤行(枕経)は、ご本尊(お内仏)に向かって、お勤めをするものです。出来るだけご遺体はお内仏の近くにご安置します。お勤めの間は、遺族、近親者ともに静かにお参りをしてください。
A 通夜・葬儀等の打ち合わせがまだの場合は、お勤め後に寺務所や葬儀社と打ち合わせてください。


【弔問者としての心得】
@ 必ず念珠を持参しましょう。
A 服装は、地味な普段着でかまいません。
B 先ず、ご本尊(お内仏)にお参りし、次に故人と対面します。
C 遺族に挨拶(おくやみ)をします。



3 納 棺

@ お通夜の前に遺族、近親者でご遺体の湯灌(ゆかん・清拭)をし、納棺をします。
A ご遺体に白服を着せ、胸前で合掌をさせ、念珠をかけます。納棺尊号を納め、棺覆(かんおおい)または、七条袈裟をおかけします。
なお、ご遺体に旅装束(手甲・脚半・わらじ・笠・杖・六文銭等)はさせません。暗い三途の旅をするのではなく、すでにお浄土に生まれておられることを見失わないようにしましょう。



4 通 夜

@ お通夜は、葬儀の前夜に近親者、友人、知人など、苦楽をともにした人びとが仏前にあいつどい、故人を追憶して、共々がお念仏を申し仏恩報謝の思いを深める場です。
A お通夜が始まる前に、ご本尊さまをお迎えし、葬儀壇正面におかけします。
通夜・葬儀は、すべてご本尊さまを中心に執り行われます。ご本尊さまは、故人の写真等で隠れないようにしてください。
B 住職・遺族・近親者・知友一同、ご本尊さまに向かってお勤めをいたします。

【弔問者としての心得】
@ 必ず念珠を持参しましょう。
A 喪服を必ずしも着る必要はありません。
B 仏前(葬儀壇前)で合掌・礼拝をします。その時、鐘を打ったり、線香を上げる必要はありません。



5 葬 儀

@ 葬儀責任者は、前もって住職と、弔辞・弔電・挨拶等の、式の進行について打ち合わせをします。
A 帰敬式(おかみそり)を受けていない場合、お勤めの前あるいは後に住職から行ってもらいます。
B お勤め後に、最後のお別れをし、出棺となります。
C お骨があがったら、還骨(灰寄せ)の勤行をする地域もあります。


【帰敬式】
@ 帰敬式は、生前にご門主より受式して、漢字二字の法名を授与されるのが原則です。
A 受式していない場合は、ご門主に変わって住職が『おかみそり』をして、法名を授けます。
B この場合は、出棺勤行の前か後に行います。
C 法名は、釈○○(漢字二文字の音読みが原則)と書きます。
D 命日、俗名、年齢を記入します。
E 院号は、法名の上に書きます。
F 院号は、本願寺護持の功績により、本願寺から下付されます。

【弔問者としての心得】
@ 必ず念珠を持参いたしましょう。
A 喪服か礼服を着用します。
B 葬儀や法事等の「仏事」の包みものは、「香御典」「御供香」「御仏前」等と書きます。仏教では「御霊前」とは書きませんので、注意してください。


6 葬儀における誤った習俗

「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」という、戯れ句がありました。
私たちが常識と思ったり、疑問もなく昔からされているお葬式の習慣に、「死者」を恐れたり、「ケガレ」と見るところから、誤った習俗がたくさん行なわれています。大切な方を恐れの対象にしたり、穢(けがれ)たものにすることは、厳に慎まなければなりません。
皆がするからではなく、私がやめる勇気を持ちましょう。

@ 逆さごと(魔除け)
遺体に紋付きの羽織や着物をかけるとき、上下反対に掛けたり、遺体の上やそばに刃物(守り刀・カミソリ)を置いたりしません。
私たちは、人間であるかぎり老い・病み・死ぬものであることを知っています。しかし、この私がそうなることを真剣に考えようとはしません。むしろ考えることを避けているといってもいいでしょう。
私の「いのち」は、明日をも知れぬ、無常の「いのち」です。厳しいけれど、この現実をはっきり見極めなければなりません。そして、私の「いのち」が、不確かな、無常の「いのち」であるならば、かぎりある人生をどのように生きていくかが、問題となります。
それを教えてくれるのが、仏教であり、お念仏なのです。お互いに、「生まれてきてよかった」といえる人生を送りたいものです。「死」は、「逆さごと」ではありません。魔除けは必要ありません。

A 清め塩・釘・旅装束・六文銭
故人は私にとって大切な人でしたから、「清め塩」で穢れを除くなどの行為はいたしません。「清め塩」は、死の「ケガレ」を清める意味です。大切な方を「ケガレ」と貶(おとし)め、また「清め」ることによって「死」と離れようとする心は、生死無常の道理を見失わすと同時に、阿弥陀さまのお慈悲をも見失うものです。断ち切らなくてはならない習俗です。もうやめましょう。
また、出棺前に棺に釘を打つことはないでしょうか。釘を打つのは「封じ込め」の意味です。恐ろしいから、たたるから封じ込めるのです。故人を「たたる者」にしてしまう、悲しい行為です。大切な方を封じ込めるようなことは、もうやめましょう。
旅装束も、旅立ちに茶碗飯に突き立てた箸、手甲、脚半、わらじ、松明(たいまつ)で、三途の川の渡し賃「六文銭」を持って旅立つ姿は、想像するだけでも、痛ましく悲しい限りです。
如来さまのお慈悲で、お浄土に生まれさせていただく者が、どうして冥土に行くのでしょうか。「冥」という字は、暗くかすかなという意味です。「冥福」という言葉は使いません。お浄土は明るい世界です。

B 友 引
「友を死に引くから」「皆が嫌がるから」等々、「友引」にはお葬式をだしてはいけないと言われますが、友引や大安は「六曜」で、六つの曜日が順に巡ってきます。今のカレンダーは「七曜」で月曜から日曜まで、七つの曜日が順に巡ってきます。友引や大安は、月曜や火曜という曜日と同じで、本来、何の意味もありません。
「死」を恐れる心が、六曜のそれぞれの文字に意味付けをして、日の良し悪しを言うようになったものです。そんな意味も無いものに怯えたり、引きずられるのはもうやめましょう。「日々是れ好日」です。

C 道を変える
火葬場の行きと帰りの道を変えなくてはと、心配される方もあります。これも死者が付いて帰ってこないように、道を変えることで迷わそうということです。
地域によっては、出棺時にお棺をグルグル回すところもあるそうです。これも目を回させて、方向感覚を奪い帰ってこないようにする習俗、また故人が生前使用していたご飯茶碗を割ってしまうという地域もあります。これも帰ってもあなたのご飯はないよと、死者を恐れ突き放す習俗です。
考えたら、ずいぶん残酷なことです。もうやめましょう。

D み教えに合わない言葉
お葬式やご法事などの仏事に際し、浄土真宗のみ教えに合わない言葉が、多く使われています。その仏事の意味をもう一度考えていただき、正しい言葉を使っていただきたいと思います。

×み教えに合わない言葉
  ⇒ ○浄土真宗の正しい言葉
×ご冥福をお祈りいたします。
  ⇒ 哀悼の意を表します。
×安らかにお眠り下さい。
  ⇒ お浄土からおまもり下さい。
×天国に
  ⇒ お浄土に
×草葉の陰で
  ⇒ お浄土で
×幽冥を境にする
  ⇒ ご往生された
×鬼籍に入る
  ⇒ 仏になられた
×開眼もどし・お性根(魂)ぬき
  ⇒ ご遷座法要・ご動座法要
×開眼・お性根(魂)いれ
  ⇒ 入仏慶讃法要
×御霊前
  ⇒ 御仏前
×献杯(けんぱい)
  ⇒ いただきます



7 納 骨(礼参)
葬儀終了後、当日または翌日、お寺のご本尊さまへお礼の参詣、納骨堂への納骨をします。



8 中陰法要(四十九日法要)
中陰法要とは、亡くなった日から四十九日間のことで、その間に七日毎に、初・七日、二・七日・・・と、勤めます。お勤めは逮夜(前日)でも結構です。
特に七・七日(四十九日)は、満中陰として、丁寧に勤めます。この法要は、追善供養の仏事ではなく、今は亡き故人を偲び、それを縁として仏恩報謝の思いを深める仏事です。

【満中陰の心得】
@ 中陰壇を設け、遺骨を安置します。
A 正面にご本尊(お名号)をおかけします。
B 水・お茶・陰膳等は供えません。
C 満中陰後、中陰壇は取り払います。
D 白木の位牌はお寺にて焼却処分します。
E 法名は、過去帳または法名軸に書き写します。

9 納 骨(お墓・大谷本廟)
四十九日法要や一周忌法要などにあわせて納骨法要を勤め、お墓にお骨を納めます。
浄土真宗では親鸞聖人のお墓のある大谷本廟(おおたにほんびょう)に分骨するのが習わしです。当院は大谷本廟では、祖壇納骨となります。手続きなど詳細は寺務所にご相談下さい。